基本情報
著者:ingectar-e (著), 山口 謠司 (解説)
出版:インプレス
発売:2024/8/21
Amazonリンク
レベル:初心者向け
傾向:感覚〇・・・・理屈
<この本でわかること>
✓言葉とその意味
✓色のイメージ、カラーチャート
✓創作のアイデア
引き出しを増やす、優秀なネタ帳
本書はカラーチャートと文字による、イメージの辞典です。単なる色やRGB / CMYK情報の羅列ではなく、創作的な要素がとても多く、読み物としても楽しめます。絵を描く人やデザインに関わる方はもちろん、小説や漫画などといった創作全般に貢献できるでしょう。イメージと言葉、意味を並記しており、それに合わせたカラーが掲載されています。kindle版もあるので、色はデジタルデータから拾う方が簡単だと思いますが、印刷がとても綺麗なので、紙版もオススメです。

私は日本に生まれて長いこと経ちますが「残映(ざんえい)」、「花笑み(はなえみ)」、「一辺氷心(いっぺんのひょうしん)」、「薫風(くんぷう)」など……知らない言葉が多かったです。選んでいる単語がどれも美しく、著者のセンスが光ります。

今のトレンドに合わせたカラー見本
全体的に写真の配色がとても良いです。加工も入れていると思いますが、調整が絶妙です。このデザインにもイラストにも使える配色ってかなり難しいと思うので、上手い落とし所をよく作ってるなーと感心します。左のチャートから色を拾っても良いのですが、色についてすでにある程度の知見をお持ちの方は、右のイメージを分析していく方が勉強になるように思います。

ポップなイメージもあれば、沈んだトーン、同系色でも少しずつ配色のバランスを変えることで見え方が大きく変わります。誌面全体の情報量が多いわけではないのですが、一つ一つのコンテンツを洗練させて、慎重に表現を選んで作られているように思います。すべての見開きにおいて、パターンとデザインのサンプルイメージを個別に描き下ろしており(ページの左下)、シンプルながらもの凄く手間がかかっていることがわかります。

普通に読むだけでも面白い
この本の良いところは、勉強!学習!という気合いを入れる必要があまりなくて、小説や詩を読むような感覚でパラパラとめくることができる点です。色のイメージだけではなく、様々な雑学が増えていきます。以下に引用した「黄昏時(たそがれどき)」は、言葉や意味自体は知っている人も多くても、その由来は意外と知られていないと思いました。少なくとも私は初めての情報で、面白いし、深みも感じます。
黄昏時 – たそがれどき –
古くは「たそかれどき」と言った。「たそがれ」と同じ。「誰そ彼は(あれは誰か)」という意味で、夕暮れ時、人の顔を区別しにくい時間のことをいう。また年齢を重ねて衰えが見えてきた頃のことにも使う。(本文:246ページより)

用例については、オリジナルの文章もありますが、小説や古典文学などから引用しているものもあります。こういった細かい部分でもしっかりと創作のポイントを抑えているようなところもあり、著者の持つなんらかの文脈を感じますね。作品を調べたり、読んでみたいという気持ちにもなります。「泡沫(うたかた)」では、有名な鴨長明の『方丈記』が引用されており、中学生の時に暗記した記憶を思い出しました。他にも『徒然草』『万葉集』などから近代文学まで、様々なセンテンスを読むことができます。

尖った企画ながら、作りきっている
本書はユニークかつ、とても尖った切り口の企画だと思います。単にカラーチャートとしてまとめるのではなく、言葉とイメージをセットにしていることにセンスを感じます。そしてこのバランス感で本を企画するのは、制作者のハードルをめちゃくちゃ上がると思ってます。ともするとダサくなってしまいがちなリスクがあるからです。

デザインのカラーチャートであり、実際に文字量が多いというわけでもないのに、読了後は良い映画をみたような感覚になる、そんな良書です。



