Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図 by ハンス・P・バッハー (著), サナタン・スルヤヴァンシ (著) 

ライティング

基本情報

著者:ハンス・P・バッハー (著), サナタン・スルヤヴァンシ (著) 
出版:ボーンデジタル
発売:2019/7/25
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レベル:初心者向け
傾向:感覚〇・・・・理屈

<この本でわかること>
✓ストーリーの見せ方、絵づくりの基本
✓ライティングや構図の考え方
✓映像を参考にした練習方法

ディズニーの伝説的なスタッフによる解説

プロのイラストレーターに「一番おすすめのイラスト本は?」と聞くと、一番名前が挙がるのが本書だと思います。特に絵を教えている人はリスペクトしている人が多いです。

著者はディズニーアニメの『美女と野獣』、『アラジン』、『ライオン・キング』などでプロダクションデザイナーを務めた、映像界のレジェンドクリエイター、ハンス・P・バッハーさんです。共著者のサナタン・スルヤヴァンシさんと7年半の歳月をかけて執筆されました。

まずこのクラスのデザイナーが本を出してくれること自体が貴重ですし、書いてあることは一線級の内容です。とはいえ決して難しいわけではなく、むしろ感覚的に取り入れやすいのではないかと思います。翻訳独自の硬さはありますが、文字が多いわけでもなく、むしろ絵として理解していくタイプの本になります。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

視線誘導、構図、ライティングの概念がわかる

本書はシンプルな図形を使い、感覚的に構図に関する説明を進めています。文章で細かく書くよりも、優れた図を提示する方が読者が理解できることをわかっているからです。この図がどれも達人級なんですよね……。実際に巨匠なので当たり前ではありますが。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

線の持つ意味や動きを提示しつつ、それを具体的に起こしたイラストレーションも豊富な作例で書かれています。これによって最初の作図や文章で「どういう意味?」となったとしても、別の絵で補完されるのです。感情的な構図やイラストも、分解していくとシンプルな線や色の集合であり、この考え方の応用力がすごいのです。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

映像のノウハウはイラストでも生きる。フィルムスタディをやってみよう!

本書は映像の現場で使われるノウハウをまとめたものにはなりますが、これは通常の平面イラストでも活用できます。どんな絵にもその中で狙っている演出意図があります。キャラクターを中央にどん!の立ち絵であってもです。こういった演出をより効果的に伝えるためには、映像のノウハウは生きてきます。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

特に昨今のイラストは、複雑な文脈をひとつの画面で表現していくような高度なことがトレンドになっています。人物の感情や人間関係、前後のストーリーなどです。こういった「直接描かれていないものを想像させる」ことに、演出は使用されます。

本書の中では、このような力を身につける実践的な練習として「フィルムスタディ」を推奨しています。映画を見て、印象的なシーンを短い時間で描き起こすというものです。以下は私が実際に1枚10〜20分程度で描いたものです。映画は『2001年宇宙の旅』です。

ブログの著者による習作
ブログの著者による習作

この時のポイントは少ない色で表現することです。私は白を含めた3色で描きました。やってみるとわかりますが、めちゃくちゃ難しいです!凄まじく頭を使いますし、模写の力も必要です。元々の作品がフルカラーなので、どの色を省略すべきか、何と何をまとめるべきか、という思考が必要です。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

フィルムスタディについても、本書にハンスさんの作例が載ってますが、まぁ〜〜〜〜〜上手い!ハンパないです。上手いのはそれは当たり前なんですけど、ここまで上手いのかってくらい上手いです。やはり上手い人の絵を見るのは気持ちいいし、テンションも上がります。実践しつつも打ちのめされるを繰り返しながら、チャレンジしていくのが良いと思いました。

映像の概念をイラストにインストールしよう

本書は2019年のリリースですが、映像的な演出ノウハウはますますイラストの分野で重要になっていると感じます。現在人気の美少女ゲーム『ブルーアーカイブ -Blue Archive-』のイラストなどはライティングや演出が凄まじく練られています。もちろん女性向けのジャンルや、デフォルメ系であっても、複雑な空間設計や構図、ドラマチックな演出が増えています。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

イラストが高度になっている背景はこのようなノウハウ書が充実してきている背景はとても大きいと考えてます。ネット上のノウハウではなく、書籍としてまとめられたものは情報が深く、正確性も高いので、しっかり研究すると相応の効果が返ってきます。

引用:Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図(Amazon)

ちなみに本書は定価4,000円(+税)となかなか良い値段です。ボーンデジタルの本は翻訳が多いので、値段が上がりがちになりますが、それ以上の価値は間違いなくあります。いずれもプロ仕様なので、カジュアルな雰囲気はないのですが、私は初心者にも十分おすすめできると思います。むしろ構図や演出の考え方は手くせで描いているとなかなか身につかないので、できるだけ早い内に思考にインストールしておいた方が良いかもしれません。文字が多くないので、読むのが楽な点も良いです。

多くの人が「ベスト」と訴える強さが本書にはあります。少しでも気になったらAmazonでもレビューを読んでみてください。

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