キャラクターイラストの引き出しを増やす ポーズと表情の演出テクニック by カリマリカ

人体

基本情報

著者:カリマリカ
出版:翔泳社
発売:‎ 2022/7/11
Amazonリンク

レベル:中級者向け
感覚:感覚・〇・・・理屈

<この本でわかること>
✓ポージングの考え方
✓素体で演出を検討する方法
✓様々なポーズの引き出しが増える

脱・棒立ちポーズ!凄まじい速度で人体が改善する

人体をある程度描けるようになる悩みとしてポーズが固くなるというものがあります。キャラクターは、意識的に描かないと、同じような角度や身体の動きになってしまいがちです。手を挙げる、腕を組む、座る、走る……などの動作はなんとなくで描くこともできます。本書はここにキャラクターの魅力を伝えるためにはどうするか?といったアプローチをとっています。この点が本書のユニークな点であり、イラストに即応用しやすい良いところです。

ポーズの練習の一つとして、写真からイラストに起こすというものがあります。実際に商業イラストレーターをはじめ、多くの方も実践しています。しかし、この方法は初心者にはなかなか難しいと思われます。それは、写真の動きではなく、プロモーションなどの要素を拾ってしまうからです。写真は情報量が多く、その取捨選択が難しいですのです。また、イラストは大げさに描くなどの誇張表現が必要です。このようなデフォルメをポーズに応用していくには「型」を覚える必要があり、本書は大きな助けとなります。

本書の素晴らしい点は、作例が豊富で分かりやすい点です。以下のように、食事ひとつとっても、性格を表現できることがわかるでしょう。こういった技術に特化した専門書は意外と少なく、素体を並記してくれているのがとても親切です。同じキャラクターデザインでも、ポーズに演出によって印象が変わることがわかります。

ポーズを覚えると、キャラクターイラストは10倍楽しくなる

オリジナルでも、二次創作でも、自分がイメージした人物を描くことは楽しいです。ポージングが上手くなれば、それらの情報を何十倍にも強調することができるのです。ポーズは表情ともセットで学習します。身体の動作と表情が伴うと、人物はとたんに生き生きとしてきますよね。

表情は主に眉、目、口のパーツによって作られます。こういったパーツが表情に大きく影響することは初学者の方でも理解していると思います。本書はここからさらに1〜2歩踏み込んで、表情の変化や、うわまぶた、下まぶた、瞳のサイズなど細かな点についての提案をしています。こういった知識がないと、意外と描けない表情は多いです。例えば「無気力」といった顔はどのように描くのが良いでしょうか?真顔とは少しニュアンスが違いますよね。どこか呆けていて脱力しているような、物事への関心が薄いような、そういった要素を拾う必要があるのです。こちらも本書で作例が紹介されてます。

人物作画自体の指導ではない、初心者は難しいかも

本書は中級者以上向けです。人体を描くことに苦労する方は、まず基礎を固めてからチャレンジした方がよさそうです。いわゆるプロモーションや、美術解剖学、練習方法などは紹介していません。あくまでもポージングに焦点を絞った指導書であり、そこにコンセプトを絞ったのが優れた点です。

私は本書をよりよく活用するためには、まずは基本となる人体の練習を進めてからが良いと考えてます。イラストとしての魅力を上げることはむしろ考えなくてよくて、人体の特徴やポーズをとったときの形を覚えるのです。練習方法としてはジェスチャードローイングや模写が良いでしょう。

この本はあくまでもポーズとキャラクターの性格を紐付けることに特化しています。特に実際の活用シーンを想定したキャラクターイラストになっているのが、とても分かりやすいです。類似書ではすべて素体にする、写真にするなどがあり、これはこれで良い部分もあるのですが、実際のイラストとしてどういう見え方になるかがイメージつきづらいんですよね。そういった意味で男性・女性、ファンタジー・リアルなどの服装や設定を決めてしまったことが、企画としての成功要因だと感じます。

カリマリカさんもくせのない絵柄で描いて頂いているので、作例の立て方としてはとても秀逸です。作例イラストに作者の個性が出過ぎると、学習の際に邪魔になることもあるので、絶妙な塩梅だといえます。通読してもよいですし、気になった所だけ拾うのもありです。

是非、あなたの本棚の一員に迎えてあげてください!