アニメスタジオで教わる背景画の大原則 by 増山修

背景

基本情報

著者:増山修
出版:KADOKAWA
発売:2023/5/31
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レベル:中級者向け
感覚:感覚・・・〇・理屈

<この本でわかること>
✓アニメスタジオで求められる背景美術のテクニック
✓絵作りの基本原理
✓ライティング、遠近
✓雲、地面、樹木など基本モチーフの描き方

スタジオジブリ出身クリエイターの至極の技術

多くの背景美術作品を担当した増山修さんによる技術解説書です。過去に担当した作品に『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』、『メイドインアビス』、『時をかける少女』などがあり、現場出身の重要なテクニックがこの一冊で学べます。

引用:アニメスタジオで教わる背景画の大原則 神技作画シリーズ(Amazon)

当たり前ですが、めちゃくちゃ上手い!実際に現場で使われた背景美術も収録されており、解説もふまえてとても貴重なものになっています。このレベルのクリエイターが本を出してくれる良い時代になったものです。序盤の作品を見ていると「こんなの描けるわけね〜」と思うかもしれませんが、実践的な作例や考え方はしっかり解説してくれます。

引用:アニメスタジオで教わる背景画の大原則 神技作画シリーズ(Amazon)

ハイレベルな背景美術についてもどのような技術が使われているからを分解して解説しています。もちろんこれを学んだからといって一朝一夕でできるようになるものではありませんが、知識ゼロの状態とは大きな差があります。

引用:アニメスタジオで教わる背景画の大原則 神技作画シリーズ(Amazon)

とにかく実践的なテクニックを学べる

引用:「アニメスタジオで教わる背景画の大原則」本文50-51P

本書の特徴は”商業アニメの”背景美術のスキルが学べる点です。タイトルにも描かれているとおり、汎用的なスキルというよりも、アニメスタジオで修得することに特化しています。アニメは映像コンテンツであり、大量の背景が必要です。あくまでも登場人物や世界観を表現することが重要であり、背景そのものが主役になることが少ないです。最終的に良い絵に仕上げていくモチベーションはあるものの、職人的な目線が必要とされており、時短やロジカルな考えも重要になります。

引用:「アニメスタジオで教わる背景画の大原則」本文78-79P

解説しているノウハウは理屈や手順がわかりやすく、どれも実践的で使いやすいです。特に現象を単純化しているモデルは、大きなヒントになります。完全な初心者のには難しいかもしれませんが、ある程度絵を描いてきた方が背景にチャレンジする時に大きな助けになるでしょう。

最終的に仕上げている作品はとても高度ですが、その下地には基礎的な考えがあることが本書を読めばわかります。もちろん実践できるようになるには、練習あるのみです。ただし背景においてはとりあえず手順通りに進めることが比較的やりやすいと私は考えてます。他のモチーフの例でいえば、人体は正しい構造やプロポーズなどをとれないと見栄えが悪くなることがありますが、背景に関しては比較的幅を持たせて表現しても違和感が生じにくいです。自然物(地面、樹木、雲など)に人体ほど正確なプロポーションは求められないからですね。もちろん専門的に学んでいけば夏の雲の特徴や土や石の種類などは存在しますが、それはステップバイステップで進めていけばいいと思います。

まずはハードルをあげずに本書の基本事項を実践していくことが、様々なモチーフをそれらしく描く近道となるでしょう。


引用:Amazonより

本書は商業的な背景画教本の双璧のひとつ

背景画といっても商業現場で使われるものは業界によって大きく異なります。本書で解説しているものはアニメの「背景画」「背景美術」であり、厳密には背景イラストではないのです。本書はこの差を理解する上でも大きな助けになります。

私は大学に勤務していますが、学生から相談で「背景で仕事をとっていきたい」と言われることがあります。「どんな仕事をとりたいの?」と聞くと、「わかりません」と言う。背景を描く仕事もイラストなのか、ゲームなのか、アニメなのか、説明(テクニカルイラストレーション)なのかによってすべて異なります。同じ会社で近しいように見える仕事でも、異なるのです。アニメ会社では背景画と背景美術と美術設定はそれぞれ違います。こういった違いは具体的な技術を学んでいくことで理解できます。実際にアニメやゲームの現場に行かなくても書籍が大きな助けになってくれます。

ちなみに、ゲームのコンセプトアートは『世界観の作り方 アイデア出しからデザインまで わかりやすいコンセプトアート入門(有里)』で学んでいくのが良いでしょう。

仕事を理解する上で大切なのは、本職の人が書いた本を読むことです。背景に関する本は沢山ありますが、仕事上で使われる技術を解説した本は専門的であり、貴重です。これらの著者は会社でもベテランであることが多く、後輩を指導する立場にもあるので、教え方も磨かれていると考えて良いでしょう。

書籍は誰でも偉大なアーティストに教わることができる素晴らしいメディアです。是非本書を役に立てて、背景美術を学び、作品制作のクオリティをあげていってください。