基本情報
『Re:pabillion』
入場料:1,000円(税込) ※無料・割引特典あり。詳細は公式HP参照
主催:R11R
協力:池袋PARCO
開催日:2024年10月17 日(木)〜 2024年10月28日(月)
開催時間:11:00~21:00 ※PARCOの営業時間に準じる
開催場所:東京都豊島区南池袋1丁目28−2
イラストとの超次元で”カオス”なコラボ空間
池袋PARCOで開催されているR11Rの『Re:pabillion』の内覧会に参加しました(柿坂さんありがとうございます!)。今月の17日から池袋PARCO FACTORYで開催されている展示企画で、「カオス」をテーマにイラストレーターやアーティスト、デザイナーがコラボレーションを行っています。
最初に書いておくと、絶対に行った方がいいです!後段にもまとめますが、ここが時代の分岐点になると思います。

作家のラインナップは非常に豪華で、イラストレーターとしては米山舞さん、AF_KUROさん、necoさんなどの人気作家が多数参加しています。他にもPanasony™さん、はくいきしろいさん、花譜さん、草野 剛さん、HUKANZENさん、アオイネオンさん……デザイナー、歌手、造形作家、芸人など、総勢50名以上でとにかく幅が広い……!

イラストの見応えがありますが、造形物の展示がめちゃくちゃホットですね。どれもよくできており、空間でオーラを放っています。
主催の柿坂さんに話を伺ったところ、短期間で準備をしていたようで、色んな仕事を回しながらここまでの仕上がりを実現できたのはただただすごいです。イラストのレベルもそうなのですが、立体作品とのコラボとなると、進行の難易度が大きく上がります。制作に時間もかかる上に、作家同士の調整も必要です。皆さん忙しいので、それを50人も……と考えるだけでクラクラしてしまいます。
立体になると「とにかく可愛い」ハマる組み合わせ
イラストは印刷をするだけでめちゃくちゃ可愛く見えてしまうのは自分だけでしょうか。物体として質量を得るとモニターでみるよりも圧倒的な量感や存在になります。ここに造形的な視座が加わると、さらに多元的な文脈が発生していくのです。

米山舞さんからも直接、制作についてのお話も聞けました。額の制作を担当したTSUBASAさんがとにかく良い仕事をしており、イラストとのバランスがすごい。3つの展開方法で出力していますが、いずれも異なったアプローチです。これは是非会場で本物を確認してみてください。


AF_KUROさんの展示もとても面白いです。よーーーっく見ると、レイヤーの裏側までイラストを描写しています。これも会場でしか確認できません。絵としても高解像度で細かいところまで徹底的に調整されています。出力を前提にすると制作時間は大幅に上がります。デジタル絵は粗が目立つので、モニタを前提にする場合と比較して、少なくとも倍は工数がかかると思います。
技術的なアプローチも面白く、木、金属、ネオン、アクリル、樹脂など……様々素材の加工を見ることができます。これが「ハードに造詣がある人達の仕事か〜〜〜」と、ネットの人間の私からすと羨ましいし、悔しくもあります。


『Re:pabillion』は新時代の展示企画となるだろう
デジタルのイラストは二次元なので、展示における見せ方は大きな課題の一つです。同じ二次元でもアナログ絵画の場合、制作が三次元的なので空間の中での見え方を自然と意識する側面もあります。つまり、デジタルイラストを立体空間に「移動」させるに際しては、なんらかの再解釈が必要になると私は考えてます。

2022年頃からUV印刷を軸としたイラストレーターの展示が人気になってきましたが、今回のコラボレーションは次の転換点になると思いました。当たり前ですが、印刷はUVだけではないし、様々なクリエイターや職人が存在します。
これまでのイラスト展示は、いわばネット発の絵描きの発想で展開しており、サポート側も専門的な知識があるわけではありませんでした。そういった中でも、SSS by applibotやpixiv WAEN GALLERYなどが奔走し、なんとか形にしてきた流れがあったと見ています。

『Re:pabillion』の仕掛け人はR11Rの柿坂さんと柴﨑さんです。看板と服飾といった出自を持つ彼らは、発想や引き出しが私の様なインターネットの人間と違った強みを持っています。
企画が面白くなるタイミングは、アイデアが跳躍するかどうかだと私は考えてます。絵を描いて普通に印刷して、普通に展示した、でも良いですが、そこには跳躍はありません。「まぁこういう感じだね」という感想になってしまいます。これはクオリティとはまた少し違う軸です。
この「跳躍」というのは、知識と思考によって成功します。下から発想を積み上げつつ、横の意見と取り入れて、突飛な発想との紐付けを延々と思案しているうちに急に降りてくるアイデアです。

そういった意味で今回のコラボレーションには、イラストレーションの跳躍を見ました。私が絵関係の仕事をしているので、どうしてもそちらが主軸の感想になるのですが、ここまでしてくれてありがとうございますという気持ちです。
フィジカル空間への評価、アートへの接続はあるか?
今の時代の中で、この展示が出てきた意義は非常に大きいです。つまりクリエイティブの発表の場として、ネット全盛の時代からの変化が起きていることです。昨今のX利用規約改定(投稿コンテンツのAI学習への利用)から、SNSやネット上に作品を公開することについて多くのクリエイターが考えています。
これからのイラストコミュニケーションはより物質的な情報を伴う、さらに複雑で高度なクリエイティブが要求されてくると私は考えています。これの行き先がアートになるのかはわかりません。

『Re:pabillion』の参加クリエイターで「アート作品を作っている・売っている」という認識を持つ人は少ないのではないでしょうか。「アート」という言葉は汎用的に使われていますが、私が考えるアートとは、現代アートの文脈であり、村上隆さんなどが取り組んでいるものです。
今回の作品が、アートライクな文脈があるな、というものはいくつかありました。例えば生成AIをなんらかの命題として組み込むのはとても示唆的です。
アーティストの指向性はともかく、アート市場の方からなんらかの接続は十分にありえると思っているし、トリエンナーレなどの出品が増えれば自然と評価もついてくるかも知れません。どのキュレーターに見つかるか次第ですね。
いずれにしてもこういった展示企画はしっかりと商業市場で当てていくことが大切です(そうでないと続かないので)。PARCOはインバウンドも強いので、客層をうまくとりこめるとさらにスケールを期待できると思います。こういったチャレンジは全力で応援していきたいです。

展示は2024年10月28日(月)まで。
ご来場の際は事前に公式サイトをご確認ください。



